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コラム
門脈体循環シャント(PSS/Portosystemic Shunt) 2013.08.27.


門脈シャント(以下PSS とは?


胃や腸で吸収された栄養分やアンモニアなどの有害物質は血液中に吸収され、門脈という血管を経由し肝臓に運ばれ、栄養分の利用や解毒等を行い正常な状態を保っています。


PSSでは異常な血管が存在し、肝臓を経由しない血液が全身に送られてしまう病気です。先天性(生まれ持った血管奇形)と後天性(何らかの肝臓の異常等が存在し、その後、異常血管が発達)に分類されます。


一般的に先天性PSSの場合、根治を目的とした外科手術の適応になり得ますが、後天性PSSの場合や、先天性であっても時間の経過が長く病状の進行した場合などは、根治は困難で主に症状の改善を目的とした内科治療の適応になります。


症状:無症状〜栄養が利用できず発育不良が見られる。低血糖やアンモニア濃度上昇による発作(肝性脳症)や尿路結石、食後の異常(嘔吐、震え、ふらつきなど)、性格の変化(徘徊、凶暴化)。腹水。肝不全(肝硬変)など多岐にわたります。


診断:血液検査、レントゲン検査、超音波検査、尿検査等で疑いを持ち、CT検査、肝生検、門脈造影検査等で確定診断を行います。


外科治療:シャント血管が肝臓の外部にあるか内部にあるかにより難易度やリスクが異なります。様々な方法で異常血管を閉鎖し、肝臓(門脈)への血流を増やし正常化させます。肝臓内の血管の発達が未熟な場合は、一度に閉鎖すると門脈高血圧症(腹部の痛み、出血性下痢、腸内毒素によるショックなど)による死亡、または後天性PSSを引き起こし根治対症から外れます。そのため肝臓内の血管の発達を促す目的で段階的に異常血管の閉鎖を行い複数回の手術を行う事もあります。


内科治療:点滴/食餌/薬剤等により、アンモニアの発生、吸収を抑えたり、腹水のコントロールを行う事で症状の改善を試みます。


当院の症例です。猫のPSSは犬の1/10程度と言われています。



猫/♀、約6ヶ月齢。発作を引き起こし来院。血液検査にてアンモニアの高値を認めたため、PSSを疑い各種検査を行いました。



CT検査にて太い異常血管()の存在が確認され、肝臓への血管(門脈/)の発達不良を認めました。



こちらが正常なCT検査画像です。門脈()はしっかり発達しており、異常血管は存在しません。



手術にて異常血管()の確認を行い、造影検査を行います。



造影検査においても異常血管()への造影剤の流入が確認され、門脈()への流入は確認できません。



異常血管()を遮断後に造影を行うと、門脈()への造影剤の流入が確認できます。しかしながらこの時点で、門脈圧が安全域を大きく超えていたため、門脈高血圧を憂慮し完全閉鎖を断念、安全域での部分閉鎖を行い肝臓内の血管の発達に期待し、2回目の手術を行う事としました。





4ヶ月後の2回目の手術では、門脈()と肝臓内への血流が十分確認でき、異常血管遮断時にも門脈高血圧が認められなかったため、安全に完全閉鎖()を行う事が可能になり、根治・治療終了としました。

その後は合併症も認められず、血液検査の正常化、体重増加などいわゆる“普通の女の子に戻ります”とのことです。もし町中で見かけられましても“普通”の猫として接してあげてください。皆様よろしくお願いいたします。