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コラム
脊椎 不安定症/脱臼/骨折 2012.03.30.

今回は脊椎(背骨)の不安定症/脱臼/骨折について。

脊椎の脱臼は主に外傷や先天的な関節の異常によって引き起こされます。

落下事故など強い衝撃はもちろんですが、特に小型犬に多いのが環軸脱臼です。7個ある頸椎の1、2番目のズレによって生じ、軽度から中程度では激しい痛み、神経麻痺、重度の場合は即死もありえる病態です。強固な関節に必要な歯突起といわれる部分が欠損もしくは形成不全により、関節が不安定になりやすいという要因が根底にあるかもしれません。

診断はレントゲン、CT、MRI検査で確定しますが、レントゲン検査で判明するレベルの状態は基本的に重度です。

治療には様々な方法がありますが、外科手術の目的としては神経への圧迫を除去関節を安定させることで、今以上の悪化要因を除去し、神経の回復しやすい環境を提供するということがポイントになってきます。神経機能を直接回復させるという目的ではありません。ギプス固定などの方法もありますが、関節周囲の靱帯も断裂等の障害を受けていますので安定せず、無効もしくは外すと再発というケースが多いと思われます。

椎間板ヘルニアや腫瘍などと同様に脊髄を圧迫する病気は神経障害が重度、また時間の経過とともに神経の回復が悪化もしくは不可能になりますので、手術を行っても結果が必ずお約束できる訳ではありませんし、進行性脊髄軟化症により術後死亡する可能性もあります。が、早期にチャレンジしていかないと回復のチャンスを失います。難しい問題です・・・。再生医療等がより現実的な治療法になればさらに回復率は向上するでしょうが・・・。

当院の症例です。甲斐犬、生後7ヶ月、体重14.7kg

1週間程度家出→発見→後肢の虚脱(その間彼女にいったい何が・・・?)

レントゲン検査にて胸椎の13番目と腰椎の一番目の脱臼、骨折が判明。

歩行可能。神経学的検査では固有位置感覚(足の位置の自覚)は弱くなっていましたが、深部痛覚は正常。



①無治療であった場合、よくて現状維持もしくは悪化の可能性が高い。

②現在は手術適応な状態で回復のチャンスが残されているが、悪化した場合手術を行っても回復の可能性は低くなる。

③結果はチャレンジしてみないと分からない。手術の有無に関わらず進行性脊髄軟化症で死亡する可能性がある。

以上の要点をご理解していただき、次のステップへ。





CT検査にて神経の圧迫度合いの評価、手術方法の検討。様々な固定方法がありますが、今回はプレート固定を選択しました。



術後2ヶ月程度は間欠的な痛みや、ロボット様の固い動きの歩行が見られましたが、その後は痛みや歩様の違和感は消失しました。脱臼/骨折部の安定、神経機能の回復が予想されます。

術後3ヶ月現在は活動的で、病気前の生活を取り戻しています。



あなたレディーでしたよね?家出とか度が過ぎた遊びとか、ほどほどに。

困難な症例でしたが飼い主様の素早いご理解とご決断に感謝いたします。